2013年06月14日

内科病棟376(狭心症入院記)カルテT

年が明けて平成14年2月14日(バレンタインデー)、単身赴任先の滋賀県近江八幡は寒い夜だった。
当時、「命ある限り」を執筆していて、風呂に入るのがもう日付が変わろうとしていた。
いつものように脱衣室で裸になって、浴室へ入った瞬間だった。
「うっ・・・・・・」喉の下からみぞおちにかけて、鈍い、圧迫されるような痛みを感じた。
「なんだろう?」経験したことのない痛みだった、痛みは10分ほど続いて収まった。
「食べすぎかなあ、きっと胸焼けだ、最近暴飲暴食だしな」この程度に感じていた。
明日は早朝から仕事だし、7時30分までには水口(滋賀県)へいかねばならなかった。
布団に入ると、すぐに眠りについた。明日の天気予報は雪、今年一番の寒さとのことだった。

2月15日(金)朝6時に起きた、寒い朝だった。
窓のカーテンを開けて外をのぞいて見た。銀世界だった、車は雪で覆い尽くされていた。
早めに支度して車の雪かきしないと、時間がないなあ・・・今日は金曜日だからゴミも出さないと、急いでゴミをかき集めてポリ袋に入れた。
そして、めんどくさかったのでパジャマのまま、ゴミを出しに玄関を開けようとした。
玄関のところに箒が置いてあったので、ついでに雪かきしようと思い、持って出た。
「おー寒む・・・、なんか羽織ってきたらよかったなあ」ゴミをごみステーションへだして、箒で車のフロントガラスを中心に雪をかいた。
足元に落ちる雪で、パジャマのすそが濡れてきた。
「冷たいなあー」5分ほどで終えて、小走りに家に入った。
その瞬間だった。「うっ・・・・・」昨日と全く同じ痛みが、胸の中心部を走った。
手で胸を押さえながら、しばらく動かず深呼吸した。
また、10分ほどで痛みは収まった。これは胃か、食道が悪いなあ、胸焼けもするしなあ、こんな認識をしていた。6時45分に車で家を出て、今日の目的地水口へ向かった。
同乗した部下にも「昨日から食道のあたりが痛いねん、俺とこは癌の家系だから、見てもらったほうがええかなあ」こんな会話をしていた。
朝一番の仕事を終えて、9時に事務所へ戻った。
まだ、胸に違和感があった、姉のこと以来、体の変化にはナーバスになっていたので迷ったが、病院へ行くことにした。
「ちょっと見てもらってくるわ」一旦車で家に帰り、歩いてO市民病院へ行った。
(歩いて1分)病院の外来は混雑していた。
初診の手続きを済ませて、内科受付へ、問診表を記入した。
「昨夜と早朝に胸に痛みを感じて、胸焼けもします」
それから「小山さん、内科3診よりお入りください」と呼ばれたのはもう10時30分のことだった。
やっと診察室の待合へ、中にはまだ5人待ってた。
20分待って、看護婦が「胸が痛むということなので、先にレントゲン、心電図を撮って来て下さい」
「どれだけ待たすのかなあ、それならもっと早く言ってくれたらいいのに」そう思った。
2階の検査棟へ行って、レントゲン、心電図と済ませて、結果をもらって、診察待合へ戻った。
それから、また10分待って、やっと診察室カーテン内の待合へ・・・どれだけ待合があるんだあ・・・いやになってきた。

「小山さんどうぞ」やっと診察へ、もう11時30分になっていた。初診担当は若い女医さんだった。
「どうされましたか」
「昨夜から胸のあたりに鈍痛がありまして、今朝もありました、時間は10分ぐらいですけど」
「どのあたりですか」
「特定の部分じゃなくて、食道のあたりが全体的になんとなく・・・食べすぎですかね」
女医が届いたレントゲン写真を診て、続いて心電図を診た。
その瞬間、女医の顔つきが明らかに変わった。
「小山さん、このような痛みは初めてですか」
「ええ・・・・・あの・・・心電図に異常があるんでしょうか」
「ええ、これは・・・・小山さん、すぐに点滴をしますから、処置室で寝てください、動かないでね」
そして、あわてて受話器をとって、内線をかけはじめた。私はなにが起こったのかわからず、キョトンとしていた。

処置室のベットに横になった、相変わらず女医師は電話をしている。
ただごとでないことが、様子からうかがえた。
すぐに点滴が投与された。何の点滴かわからず、正直不安だった。男のT医師がやってきた。
「今は胸の痛みはないですか」
「ええ、今はなんともないです」
「昨日からの様子を聞かせて下さい」もう一度、昨夜の胸の痛みからひととおり説明した。
「心臓エコー検査をしますので、救急室へ移動してもらいますね」
私は起きて、歩いて行こうとしたら、看護婦に制止された。
「小山さん、動いちゃだめよ、車椅子に乗ってもらいます」
そんなたいそうなと思ったが従うしかなかった。車椅子に乗った、看護婦が押そうとするがなかなか動かない。
「重いから、ごめんね」
「あっ、パンクしてる」なんとパンクしていた、時間もなかったので、そのまま、ギョリジョリと音をたてながら救急室へ運ばれた。
救急室は急患が運び込まれるところだった、要するに救急車で運ばれる処置室のこと。頼むから血まみれの患者が来ないでよ、そんなんみたくないーー、そう思った。
ストレチャーに乗り換えて、すぐに心臓エコー検査。T医師が今まで心電図の異常を指摘されたことがあるか聞いてきた。
そういえば、昨夏、下肢静脈瘤の手術の前にちょっと気になると言われたことが頭に浮かんだ。
「どこの病院ですか」
「尼崎の関西労災病院です」
「わかりました、さっそく心電図を取り寄せましょう」
循環器専門のY医師が加わった。やはりただごとでない・・・・またY医師に今日までの経過を説明した。
心臓エコー検査が終わり、Y医師から説明があった。

「小山さん、症状、心電図からみて不安定狭心症の疑いが強いです、狭心症というのは心臓冠状動脈の一部が動脈硬化をおこして、血液が行き渡らず、結果として発作をひきおこすものです。これが進行すると閉塞をおこして心筋梗塞という命にかかわる状態になることもあります。まずは、冠動脈がどういう状態になっているのか、これを調べる必要があります。そのために、心臓カテーテル検査と言って、動脈からカテーテルを心臓まで通して、造影剤を入れて、撮影し、治療方針を決める。この検査をおすすめします。」
「検査に危険はないのですか」
「レントゲンとかの検査と違って、100%安全ではありません、心臓まで細い管を入れるし、管が血管を傷つけたりとかする可能性はあります。事故例は0.3%と言われてますが、これは昔の話で今はほとんど問題ないです。ただ、検査を受けないと場所が場所ですから、命にかかわります」
「わかりました、やってください」
私は事の進展の早さに驚いていたが、もうあきらめの胸中だった。
「これは危険を伴う検査ですから、ご家族の承諾がいります、奥さん、来れますかね」
「私は単身赴任なんです、妻は今の時間働いてますし、3時間はかかると思います」
「単身赴任ですか、それはたいへんですねえ、でもすぐに呼んでいただけますか」
「ここで携帯電話使っていいですか」
「・・・・・・・まあ、いいでしょう」
妻の会社へ電話して、呼び出してもらって経過を話した。
妻は驚いた様子だったが、じゃあ、夜に行くからと言ったので、
「一刻を争うらしいから、すぐに来て」
「えーーー!!」妻が驚いたのは言うまでもなかった。

続く
posted by こやまっち at 23:31| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。